むかしの図鑑

[mixi 2006-09-21 タイトル変更]

子供の頃,現実にあまり興味がなかったので,図鑑ばかり眺めて暮らしていた.

私が一番好きだったのは,植物図鑑の「春の野原2」とか,動物図鑑の「新世界1」のように,たくさんの植物や動物が盛り合わせみたいに押し込んである絵だった.そういう絵は,ある時期から,ほぼ完全に図鑑類から姿を消してしまうので,ある年齢以下のひとはまったく見たことがないかもしれない.

「園芸植物」というページに,巨大な寄せ植えの花壇が描かれていて,いろんな花が植わっている,そういうイメージがわかりやすいかもしれない.しかし,花壇はいまいちの例で,川やら岡やらが無理やり描き込んであって,実際には時期や生える地域が微妙に違うであろう植物が何十種も一画面に出ている,そういうのが楽しいのである.

動物図鑑も同様だが,こちらは,後ろの解説で番号がついているのに見つからないやつを探す,という楽しみがあった.どんな姿をしているのかわからないので,最初はなかなか見つからない.ヘビなんか画面の上の端で木にまきついていたりする.

こういう図鑑がなくなったのは,ひとつには写真版が普及して絵が減ったためだが,内容がウソっぽいというのもひとつの理由だろう.いまでも生態の説明図とかはあるが,あれはほんとなので,つまらないのである.

漫画にモブシーンというのがある.たとえば,たくさんの科学者が集まっているシーンで,あちこちで勝手なことをしゃべっているのが一枚の画面におさめられている,というようなのをいう.むかしの図鑑にも,会話こそないが,これに似た楽しさがあった.プロレスでいえば,バトル・ロワイヤルである.

手塚治虫のモブシーンは最高,とかいうひとはいても,図鑑の「非科学的な」図解を懐かしむ声は聞かない.できれば,ぜひ,おとな向きに復活させてほしいのだが.