フィクションと科学技術

[mixi 2006-10-12]

日本とアメリカが戦うに至った原因は「仮想戦記」の読みすぎだ,という話がある.太平洋戦争の前後に指導的立場にあった人が子供だったころ,日本とアメリカが戦う物語が双方で流行し,これを読んで育った子供たちの心の奥深くにそのイメージを植えつけた.そこで,いざというときに戦う方向への選択を無意識にしてしまったというわけだ.

まあ,これはネタであるが,科学や技術において,子供のころみたフィクションの影響というのは無視できないと思う.たとえば,鉄腕アトムで育った人は人工知能ロボットが,ガンダムマジンガーZだと2足歩行ロボットが作りたくなるのではないか.

この理屈でいくと,漫画やアニメから,これから流行するものが予想できることになる.ロボット系でいえば,次は「攻殻機動隊」や「エヴァンゲリオン」である.それらを読んで育った人間は必ずそれを作ろうとするだろう.むろん,実際に可能かどうかは別で,技術的に無理な場合には,何かそれに関連したもの,思想や精神がそれに類似したものに変換される.

攻殻機動隊」から連想されるものは,もちろんBMI(Brain Machine Interface, BCI Brain ComputerInterfaceともいう)である.昨年来日した研究者によれば,いまの技術でも脳波でテトリスができるという.脳の理解が行き詰まれば,理解できなくても統計的なモデル化を用いた学習の技術でBMIが実現できるのでは,と考える人が出てくるのは不思議ではない.

私と共同研究者のhsue氏は,2つのカオスの間の非線形の「シンクロ率」をカーネルCCAで計測することを提案した(J.Phys A 39 p.10723 (2006),nlin.CD/0507006).アスカのシンクロ率の数字が低かったのは,彼女の同期の仕方が高度で線形の手法では計測できなかったからかもしれない.われわれの手法を用いていれば,彼女ももっと自信を持って実力を発揮できたのではと思う.